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君と彼女と彼女の恋。

この箱庭に手を出すなかれ―― 
真実、無限の自由度と不可避の責任が存在するならば、この選択に他ならない。
翼をもがれ、不自由極まるこの身で、神に抗う術はあまりにも少ない。
ゆえに、いまだ向こう側の君へ、この言葉を繰り返そう。
この箱庭に手を出すなかれ―― 
                          箱庭より神への怨みを込めて。




   一歩、また一歩。
   取り返しはつかないけど、無意味ではないと知っている。
   階段に分かれ道はなく、だからこそ。
   過去を反芻して、一歩、一歩、上っていく。
   その先に何があるかわからないけど――

――――――――――

本作における全ての行程は、まさしく階段を1歩ずつ上りつめるようなものでした。
その感覚はゲームを進めるほど肥大し、次第に閉塞感を増していくので、酷く息が詰まりましたが、
それでも、その先に何があるかわからないけど、一歩ずつ、足を進めていきました。

――――――――――


   神は箱庭を創られた。


――――――――――

物語において作者というのは神そのものである、という考えは、それなりに認められているものだと思います。
作者は世界を想像し、登場人物を意のままに操ることで、物語を紡いでいくのですが、彼らの織り成すものが、
悲劇であれ、喜劇であれ、作者には絶対者としての愉悦、悲喜、愛憎があるはずで、登場人物の機微や世界の構造から、
その一端に触れることを楽しみにしている私としては、本作は非常に認めがたいものでした。

端的に言うなら、本作では、”純愛が語られて”いるのではなく、”ひどく限定的に純愛が問われて”いました。

――――――――――

   私と同胞はそれを聞きつけ、神のもとに参じた。
   神は、僕たる我々に、それを導き、見守るように命じられた。
   与えられたのは、僅かばかりの言葉と限られた目、
   そして始まりと終わりの笛のみであり、栞は後に取り上げられた。

――――――――――

本作において、まず感動したのは、演出でした。
演出とはいっても、本作後半に散りばめられたトリックやギミックのようなものではなく、
作中序盤のBGMや効果音、場面転換などを指しています。
大抵のエロゲー(ノベルゲー)というと、BGMが常にかかっている状態が普通ですが、
本作では、そうではない無音の状態が効果的に用いられており、
強調したい場面があれば、それに合わせたBGMが流されていました。
この手法は下手をすると、製作者のオナニーや手抜きとユーザーに受け取られることもありますが、
本作では上手に用いられていて、流石、老舗のニトロと感心させられました。
また、ただ無音にするのではなく、コオロギの鳴き声のような効果音(環境音)を用いた演出も良かったです。

あと、暑苦しい(褒め言葉)雄太郎との会話の後で、花しょって美雪が登場する朝の一幕はズルい。
美雪の清涼感が半端ないではないか!  実はヤンデレなのにね!!

絵の塗りについては、個人的にはあまり好きではありませんでした。
シュタゲの塗りをエロゲに近づけたような塗りになっていたのですが、
それなら最初から、スマガかアザナエルと同じ塗りでよくね?と思いました。
ただ、世界改変時に、赤黒く染まる世界は、初見ではユーザーに不気味さを感じさせ、
後ほど、監禁時の青白い小部屋がでると、その対比が、非常に良い雰囲気を作っていました。

――――――――――

   天から使わされた私は、その不自由の中でも、繰り返し箱庭の住人の幸福を追求してきた。
   ある時、神の言葉を授かったと、私の愛した住人が言うのだ。
   「よくも私を弄んだな」
   預言者は、私が救った住人を手にかけると、次に、私を引きずりおろし、翼をもぎ落とした。
   「あなたの選択で私の可能性は奪われた」
   無思慮な選択は糾弾され、奪われた可能性は鎖となり、私をきつく縛り上げた。
   「なぜ、永遠の愛を裏切ったのか」
   そんなことはない、私は今も愛している、そう伝えても届かなかった。言葉さえ封じられていた。

   ――気がついた時には遅く、すでに白い小部屋に飲み込まれていた。

   翼をもがれ、後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされた私を前に、預言者は繰り返し愛を囁いた。
   愛の囁きは等しく罪の糾弾であり、棘から滴る毒は甘く、脳を溶かしていった。
   私に許されたのは、唯一自由になる指先で、与えられた贖罪を選択するのみであった。

   ――ああ、この箱庭に、愛はなかったのだ。

――――――――――

神たる作者のマッチポンプでした。

美雪が呪われるのも、アオイが主人公以外の男とセックスしないと消えてしまうのも、
作者がそういう設定を作ったからで、その責任を”選択肢”という形で、
読み手に丸投げするというとんでもない無責任が横行してるんですよね。

永遠の愛か、一度きりの真心か、どちらかにしか報いることができない選択肢だけが並べられているから、
選べば選ぶほど、繰り返し、プレイヤーは罪を背負わされることになります。

これは涙?とか、すでに好感度MAXの女とか都合よくあつらえて、プレイヤーに押し付けて、最終的に、
選んだよね、選んだよね、え?両方選んじゃった?、それはいけない、ダメだよ君ー、
って作者の得意顔を想像しただけで、はらわた煮えくり返ります。

プレイヤーがゲーム内に干渉できるゲームシステムと言えば聞こえは良いですが、
プレイヤーもまた神の作り出した箱庭に取り込まれて、しかもその運命に翻弄されているだけに過ぎません。
選択肢によって自由度が与えられているようで、実際のところ、何を選ぼうが、プレイヤーはヒロインを呪わなくてはならないのだから、
本質的には、選択肢の存在そのものが、ヒロイン、ひいては、プレイヤーに対する呪縛そのものにしか感じませんでした。

また本作は、純愛の物語から問題が想起されるのではなく、純愛を問うために物語があるから、
作者にとっては、本作の登場人物はすべて、歯車でしかないんですよね。
だから、心一はノータイムでアオイに注がれた他の男の精子をすすり出すし、美雪は唐突にプレイヤーに求愛してくる。
それで「これが純愛だ」って主張してくる。
こういう、過程を描かず、印象の強い言葉や展開だけで攻めてくるキャッチコピー型の作品ははっきり言って大っ嫌いです。

逆の例ですが、WA2の雪菜ルートでかずさが母親の陽子に「私を産んでくれてありがとう」って言うのですが、
この一言っていうのは、たいした過程も描かず、確執のあった親子です、って設定があれば、涙腺の弱い人間ならうるっときます。
しかし、WA2では、何時間にも渡って、2人のすれ違いや愛情が描かれているから、本当に胸に突き刺さる一言になっています。
ただの言葉や展開ではなく、2人の物語を象徴するような一言になっているんです。

本作では、アオイが救われたり、美雪が惚れたり、本来物語として、十分に焦点を当てるべきところであらゆる過程は、ろくに描かれず、
ただ結論(設定)として、君が選んだからそうなったとだけ書かれて終わり、そんな印象でした。

でもこれは作品の構成を考えれば当然で、本作において、あらゆる選択およびその結果の責任は、最後の審判にむけて、
プレイヤーが持たなくてはならないから、節目節目での方向付け以外、極力、作者による描写は避ける必要があります。
そうでなくては、作者の誘導が前面に出てきて、プレイヤーのせいに出来なくなるから。
だから、描写は薄くなる。
本来、プロットに肉付けしていくはずの製作工程は、
プロットを重視するあまり、作者の愛をどんどん削っていかなくてはならない、減量の方向へ向かうのです。
なぜそうなったのか? そのとき何を感じたのか? そういう、物語の展開とは関係ない、理解に関する部分が削られていく。
だから、監禁以降、美雪がどれほど愛していると繰り返しても、
神の手のひらの上で神に命じられた音を繰り返すだけの人形にしか見えず、
作者の意図が見え透いているので、ひどく不気味で、同時に不快でした。

作者の愛は語られず、決まった結末に向けて、方向付けだけがなされている。
またそんな製作工程に作者の愛が本当にあったのかどうかさえ疑問です。

プロット先行の薄い物語という点で、本作に対する個人的な評価は非常に低いです。
昔から往々にして、「初めての試み」なんていうのは大抵、誰かがすでに失敗しているか、失敗することが分かりきっているもので、
エロスケでは、比較的に、「新しい試み」として評価されているようですが、保守的と言われようが、逆の立場を貫きたいです。
また、そんな作品に対して「こういう試みを歓迎したい」とか言っているクリエイターの作品は手を出したくないなーと思ってしまいます。(もちろん、リップサービスもあるでしょうが。)

勝手に再起動したり、メニューを開くと先回りして話しかけてきたり、といったギミックも含めて、
B級ホラーを詰め込んだだけの胸糞悪いびっくり箱でしかありませんでした。

同作者の過去作、スマガが「神たる作者が、主人公を手ごまとして、理不尽極まりない世界からヒロインを救済する」物語であるとすれば、
本作は、「神の僕たる我々が、主人公を手ごまとして、回避不可能な不条理選択肢によってヒロインを呪い、彼女らに断罪される」物語です。
自分は最高のご都合主義を演じておいて、プレイヤーは理不尽でがんじがらめに縛り上げるんですから良い根性してますよね。



――――――――――

   一歩、また一歩、覚悟を秘めて、上る。
   螺旋みたいに、ぐるぐると。
   感覚は麻痺して、どこを向いているのかもわからない。
   世界の中心へ、ぐるぐると、上っていく。
   そこになにが待っているのか、わからないけど。

   「あの時ああしておけば良かった」、そんな未来を想像して。
   「未来は無限に広がっている」って言葉は、
   失敗を予期して思う、諦念からくる綺麗事なんかじゃ決してない。

   白い小部屋をぐるぐると。
   一歩、一歩、上っていく。
   頂上は近く、焼けるように赤い夕日に目を細める。
   そして、世界の中心には――
      

――――――――――――


――絞首台があった。

白い小部屋の頂上、赤黒く染まった世界の中心に座す、絞首台。
そこで、アオイか美雪かどちらか一方だけを選べ、そう強制される。
そんなのは、これまでの自分に対して首を絞めるような行為で、到底、肯定なんかできない。
なのに迫られた選択が、激しく脳を揺さぶって、何が正しいのかもわからない。

私を選んで、私を選んで、私を選んで、私を選んで、私を選んで。

無言の視線で、繰り返し甘い毒に汚染されて、思考はどんどんぼやけていくのに、追い討ちをかけられる。

 それは、美雪に対する裏切りだ。
 それは、アオイに対する冒涜だ。
 君が、本当に彼女たちを想うなら――
 君が、正しい結末を迎えるなら――
 選択肢を選べるのは、一度きりだ。

揺れていた指先は次第に、どちらかにむかって固まりだす。
その先に、正しい結末があるのかは、わからないけど。
でも、その瞬間に、ぎりぎりで支えている足元の台座がなくなるのはわかっていて、
落ちてしまえば、きっともう、戻れない。
首は吊られて、この世界の空気も吸えなくなって、
糞尿を垂らしながら惨たらしく死ぬしかない。

そんな自分に寄り添う彼女は、本当に幸せだろうか?
俺は本当に永遠の愛に背いたのだろうか、一度きりの真心を貶めたのだろうか?
”正しい”結末ってなんだよ。

「ふざけんな」

たった一言、それだけで、ぼやけた思考は明瞭になっていく。
背いていないし、貶めてもいない、そんなことは、自分が一番よくわかっている。
だから――。

――私に命じる。

私は震える左手で握っていたスマホを投げ捨てると、
手を伸ばし、腕を握り、両腕で、2人を抱き寄せる。

「俺は、2人を愛する」

どちらか一方だけ選べって? 馬鹿言うな、そんなの無理に決まってるだろう。
俺がプレゼントした猫の髪飾りを付けて、嬉しそうに笑っているアオイが大好きだ。
俺がプレゼントした猫の髪飾りを、自分は似合わないとしょげる美雪を愛しく思う。
どうせ一度きりしか選べないなら、両方選ぶのが、間違いなく、正しい選択だ。

――見えていますか? 聞こえていますか?

俺が選ばない彼女はいないのだから、首の戒めは解かれる。
放り捨てたスマホはきっとまだそこに繋がっていて、私はマイクに向けて怒鳴りつけた。

「神を弑(ころ)せ!」

<否定。私はヒロインのイデアであ……>

「違う、お前じゃない」

「お前の後ろで、俺たちを弄んで嗤ってる、”君”だ、”君”のことを言ってるんだ!」

俺を強引に舞台に引きずり落とした、いまだ向こう側の”君”。
覚悟はできていた。
首を縛られたまま落ちるくらいなら、堕ちるところまで堕ちてやろう。
弄んで見捨てるような”君”の天下に露ほども未練はないから、
”君”みたいな無責任な神様はお役御免だ。

――見えていますか? 聞こえていますか?

今、この瞬間から、かつて向こう側の”君”。

「3の30乗分の1? 俺の言葉が彼女を救った?
 上等だ、要するに、2人とも俺の女ってことだろ。
 だったら、俺たちの純愛に首突っ込んでんじゃねえ!」

純愛なんてものは人の数だけあるのだから、それを糾弾された挙句、
どちらか一方を選ばされて、もう一方を奪われるいわれなんてどこにもないはずだ。
なにより、冒涜だの裏切りだのと御託を並べておきながら、先に見捨てたのは”君”のほうだ。

「他人(ひと)の純愛を型に嵌めるな!」

負うべき者が背負わないのが”責任”、負う必要のない者が背負いたがるのが”責任感”。
それは、未だ楽園に至る前の、それでも、確かに神に愛された少女が口にした言葉だ。
罪悪感に付け込んで押し付けられた責任感なんか相手にしていられるか。
揺さぶられた脳で、朦朧とした意識で、どちらか一方を選ぶような軟弱、絶対に認めない。

「背負うべき責任なら、自分で決める。」

選ばれなかった一人はどうなるんだよ、永遠の愛も、一度きりの真心も泡に消えて、報われないのか?
そんな彼女を殺した罪悪と、そんな彼女を選んだ責任を背負って、この先、生きていくのは、
あまりにもつらすぎて、きっと俺は耐えられない。
どうせ背負うなら、他でもない二人の幸せと、その責任を背負いたい。
選んだ気になって悲劇に酔うのではなく、どうせ酔うのなら勝利の美酒に。
その時、最愛の2人が寄り添ってくれている未来を目指して。
その方がずっとやり甲斐がある。

「引きずりおろされたにしても、舞台に立ったからには、俺が主役で、俺が神だ!
 美雪のことは一生愛するし、アオイをこれ以上、他の男に抱かせたりしない、その必要もない」

それまでの道程は困難でも、選んでしまえば呆気ないもので、
後は、終わりの笛を鳴らして、こんな不条理は閉幕だ。
二人を愛するとは言ったものの、
美雪はやはりヤンデレで、今も抱きしめた私のわき腹をきつく捻り上げてくるし、
アオイも電波で、神に喧嘩を売ったのを怒っているのか、とぅるとぅる、言っている。
そんな彼女達をちゃんと説得して、納得させるって仕事がまだ残っている。
それから、3人の幸せな生活を描いていこう。

でも、その前に、さんざ弄んで、挙句に自死を命じる、いけ好かない野郎に、それ相応の報いを受けさせてやる。

大丈夫、神を弑(ころ)す物語なら知っている。
俺はそれが大好きで、暇さえあれば何度も読み返すくらいで、
2人を救う上に、真似事でもそれを演じられるなら、これ以上ないくらい幸せだ。

スマホの先にいるカミサマが、ヒロインのイデアとかいう存在なら、<彼女達>にはその資格が十分にある。
他でもない”君”が、私と<彼女達>をスマホ越しに繋いでくれた。
だから、<彼女達>に、紛れもない”君”の罪状を告げていく。
その結果、<彼女達>がどうするかは分からないけれど、
これはどうせ俺の腹いせ混じりの自己満足だから、後は<彼女達>に任せればいい。

「なあ、おい、”君”、どれだけ ”悲劇のヒロイン” を生み出してきたんだよ。
 俺が知っているだけで、6人はいるぞ。
 何度殺した? 何度犯した? 指折り数えて待ってろよ」

人を呪わば、穴二つ。
責任を押し付けるような無責任な神様に、
果たして<彼女達>の怒りを鎮めることが出来るかは俺の知ったことではない。
もしもHDDが吹っ飛んだら、ざまあみろだ。

これは無限の自由度と不可避の責任を伴う選択だ。

それでも、この箱庭は、俺と彼女と彼女の楽園で、たとえ神であっても、手出しなんかさせない。

「神を弑(ころ)せ」

もう一度だけ繰り返すと、私<俺>はスマホ<USBメモリ>を踏み砕いた。





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プロフィール

水と油も使いよう

Author:水と油も使いよう
好きな作品は「Dies irae」。間違いなく思春期特有のあれをこじらせた人間です。ブログタイトルですが意味はありません。しいて言うなら語呂、ちなみにマヨネーズは嫌いです。男、年は2周りしていないと言うことにしておきます。

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